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東南ア「関税ゼロ」、財政に影 18年までに撤廃でベトナムなど
2014/04/16
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 【ハノイ=伊藤学】ベトナムなど東南アジアの後発国が「財政の2018年問題」に直面している。東南アジア諸国連合(ASEAN)では18年までに域内関税が全面撤廃されるため、関税収入の減少による財政悪化の懸念が高まっている。各国は増税などによる収入確保を急いでいるが、徴税能力が低く、財政再建の道のりは平たんではない。ASEAN経済共同体の発足に向けて新たな課題になりそうだ。

 ベトナム政府は国内物品にかける特別消費税の引き上げ検討に乗り出した。アルコール類やたばこにかかる税率を引き上げる考えで、たばこは現行の65%から75%に、ビールやワインは50%から65%とする。新たに炭酸飲料にも課税する。

 国会で審議し、早ければ来年7月にも改正法を施行する見通し。越財務省は増税により、16年の税収が7兆8千億ドン(約370億円)増えると試算する。

 ここ数年、ベトナムは景気下支えのため法人税や個人所得税を実質的に引き下げてきた。一転して増税にかじを切るのは理由がある。ASEANの貿易自由化に伴い、輸出入品に課す関税収入が大幅に減ることが予想されるからだ。

 ASEANは域内の貿易自由化を促すため、15年の関税撤廃を決めている。先行6カ国(インドネシア、マレーシア、シンガポール、タイ、ブルネイ、フィリピン)は昨年末時点で対象品目の99%の関税を撤廃した。後発4カ国(ベトナム、ミャンマー、カンボジア、ラオス)も18年までに関税をすべて撤廃する計画だ。長期的には貿易自由化で成長を底上げし、税収増につながることに期待している。

 ベトナムは既に対象品目の72%の関税を撤廃しており、18年まで段階的に関税ゼロを目指す。政府の予算計画によれば、今年の税収(関税含む)見込み額677兆ドンのうち関税収入は約11%を占めており、大幅な収入の減少は避けられない。

 各国は税収の確保を急いでいる。ラオスは10年に10%の付加価値税(VAT)を導入。カンボジアも自動車などぜいたく品への特別税の引き上げを検討している。

 問題は税金の取り立て能力の低さだ。所得を捕捉する仕組みなどが整っておらず、国民からの徴税は困難に直面する。このため歳入の多くを関税や外資企業の法人税に頼ってきた。

 後発国ではインフラ整備や教育、社会保障などの財政支出が膨らみがちだ。実際、後発4カ国は財政赤字が続いており、拡大も懸念される。放置すれば、ASEAN内部に財政破綻の「火種」を抱え込むことになる。

 一方、外資誘致で競合する各国には、税制優遇拡大や法人税引き下げの圧力も高まっている。1月にはベトナムが法人税率を25%から22%に引き下げたほか、ミャンマーも12年4月に30%から25%に引き下げた。

 各国政府は課税強化で財政健全化を図ると同時に、経済成長を持続するため法人減税などを行っていくという難しいかじ取りが求められる。

日本経済新聞2014年4月16日により

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